プーシキン美術館展
中之島の国立国際美術館まで、プーシキン美術館展を見に行きました。シチューキンとモロゾフというロシアの実業家が19世紀後半から第一次世界大戦までの短い期間に、フランスであつめた近代絵画が中心のコレクションです。
セルゲイ・シチューキン旧蔵
中でも、最も目を引いたのはやはりアンリ・マティスの《金魚》でした。楽園を想起させるようなその鮮やかで華やかな、色彩の絶妙なバランス。まるで子どもがするように、描きたいものからどんどん描いていったかのような筆遣い。そしてモチーフの金魚のとぼけた味わい。シチューキンならずとも手に入れて、いつまでも眺めていたいような魅力のある作品でした。
1890年代末/油彩・カンヴァス/94×120cm
ミハイル・モロゾフ旧蔵
次に印象に残っているのは、ウジェーヌ・カリエールの《母の接吻》という作品です。この画家の作品は初めて見ましたが、全体にぼんやりと霞がかかったような画面で、モノクロームに近いような色彩で描かれています。母娘の愛情をモチーフに描いていながら通俗的にならず、見ていると自分がこの娘たちの父親であるかのような不思議な錯覚に襲われました。私にはこの二人の娘たちが、母の許しを請うているように見えました。
1901年/油彩・カンヴァス/73×60cm
イワン・モロゾフ旧蔵
これは、《アルルカンと女友達(サルタンバンク)》パブロ・ピカソの二十歳の頃の作品で、いわゆる「青の時代」の直前の作品です。私にはキュビスムのピカソより理解しやすくて好きです。
女の憂いを帯びた表情と、隣にいながらまったく違うことを考えているような表情をしたアルルカン(道化師)。アルルカンの視線の先の画面の空白が、二人の未来に立ち込める不安を暗示しているかのようです。
肘をついた二人のポーズ、太い輪郭と男女の服の色、頭の色、そして背景の椅子と壁の色、そのコントラストのすべては計算が行き届いていてドラマチックです。二人の前におかれた大小ふたつのグラスにだけ小さな希望があるようで、全体に漂う不安感を少し落ち着かせているように感じられます。これも、いつまでも見飽きない作品でした。
このほかには、ドガ、モネ、ルノワール、ゴーギャンなどのかわいい作品がたくさんありました。その中でもやはり
ゴッホの《刑務所の中庭》は異彩を放っていて、そこだけ別のオーラが出ていました。不思議な画家です。
1890年/油彩・カンヴァス/80×64cm
イワン・モロゾフ旧蔵
それから、エッチングやリソグラフなどのオリジナル版画が多数出品されていました。これらはどれも本の挿絵のようで、蒐集するには楽しいかもしれないですが、作品としてはどうしても一度版を通すので、作者から伝わってくるものが半減するように感じられました。職業柄か、素直な気持ちで見られないのも一因かもしれませんが。
娘は、クロード・モネの《白い睡蓮》が気にいったようでした。もっと大きなモネも見せてやりたいと思いました。
1899年/油彩・カンヴァス/89.0×93.0cm
セルゲイ・シチューキン旧蔵
二時間半立ちっぱなしで疲れましたが、普段使われていないシナプスに電気信号が流れたようでリフレッシュしました。
ショップで面白い栞を見つけたので、衝動買いしてしまいました。





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