国家のバカの壁
藤原正彦、養老孟司、両氏のベストセラーを続けて読んだ。普段は、ベストセラーと聞いただけで見向きもしないのだが、どちらも十年来の知己(一方的に)であるのでしかたない。
つづけて読んでみて感じたのは、論旨に結構共通点があることだ。二氏とも先端の自然科学の知識をバックボーンに、個性的な論法を用い、時に過激すぎるともおもわれる言葉を使って、わりと保守的で封建的なことを述べている点である。言い換えるなら、前近代的と言われることの再評価をしているともいえる。前近代的なことというのは、「非論理的で情緒的なもの」とされていることである。それを、「論理的」に評価するのだから面白い。それも、近代社会が論理最優先の一元論ばかりでここまできて、どうですか行き詰っていませんか、ほら破綻してるじゃないですか、と実例を挙げて論証していくところも共通している。
特に論理一辺倒ではカバーできない世界がある、という論旨には深く首肯するばかりである。普段なにげなく妥当だとおもって聞き流している論理や、理論に大きな落とし穴が潜んでいることを教えてくれている。
私はもともと自然科学にはとても興味があったのだが、勉強についていけず典型的な軟弱文系人間の道をたどって来た。その反動で、心のどこかに「論理的に筋が通っていること」に憧れを持っている。本来は、すごく感覚的で情緒的な人間であるのに、常に論理的にかつ合理的に物事を考えようとしてきた。だから、藤原氏の「世の中に流布する論理のほとんどが、私には自己正当化に見えて仕方ありません」という言葉には読んでいて本当に冷や汗をかくおもいをした。
「人生の価値は金を稼ぐことだと思っている人もいる人もいるでしょうが、私は何となく、世の中の穴を埋めることだろうと思っています。世の中に穴が空いていると、何か困るから、それなりに、それを平らにすることだと。」この養老氏の言葉は、まったくそのとおりだとおもう。何十年と同じ仕事をしつづけてきた人の、なんて事の無い言葉に感動を覚えるのは、その人が本当の人生の価値を知っているからなんだなと、考えさせられた。
両方とも新書なので、ダイジェスト的で少し物足りないがその代り気軽に読めてよかった。



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